絵画を補強する~裏打ち~

絵画を補強する~裏打ち~

「裏打ち(うらうち)」って聞いたことが
ありますか?

布や紙を使って元の紙や布を補強することです。
一般的に使われている言葉です。
今回は絵画の「裏打ち」についてご紹介いたします。

雲肌麻紙に描く場合、F50号以上だと裏打ちが必要です。
なぜかというと、麻紙が大きくなると伸縮率も大きくなり、

描いていくうちに水・乾きを繰り返し、
麻紙が激しく伸縮します。

すると木製パネルが歪んできて、木製パネルの
もとに戻ろうという力と紙の縮まろうという力が重なり、

下手すると画面が割けてしまうことがあるぐらい、
紙の力は強いのです。

それを防ぐために、裏打ちをします。
裏打ちに使う紙は細川紙か薄美濃紙です。

細川紙のほうが、薄すぎる薄美濃紙より
使いやすいと思います。

裏打ちの仕方

まず、細川紙をA3サイズに切ります。
この時、「くいさき」を作ります。

くいさきの作り方はA3サイズに折った細川紙に、
折った線の上に水を筆で引きます。

紙に水がしみ込んだら両手でしみ込んだ線が
破れるように引っ張ります。

すると、紙の繊維が伸びて割けます。
これがくいさきです。

なぜくいさきを作るのかと疑問に思われるでしょう。

なぜカッターやハサミで切ってはいけないのかと
思われるでしょう。くいさきは紙を重ねた時、
うまく接合するようにするためです。

紙の繊維が絡まって段差がなくつながるのです。

まず、大きな紙に裏打ちするときはふ糊を使います。
ふ糊は粉状で売っていますので、水に溶いて湯煎にかけ、
糊にします。

麻紙は霧吹きで水に浸しておきます。

くいさきを作った細川紙にふ糊を塗ります。
刷毛は糊刷毛を使います。

たっぷり糊をしみ込ませます。
しみ込ませたら、細川紙の一端を定規で張り付けて
持ち上げます

この時、もう片方の手で対角線の端をつかみます

そして麻紙の上にもっていき、定規を麻紙の
うえに置いて、静かにもう片方の手にもっている
細川紙を置きます。

この時、紙と紙の間に空気が入らないようにしてください。

もし入ってしまったら、空刷毛でトントンと
たたきながら空気を逃がしていきます

空気が入ったままだと乾いた時にしわになります。

なので、徹底的に空気は出しましょう。
空刷毛で紙の外のほうに流していきましょう。

この要領で、麻紙の大きさに合わせて細川紙を
張り付けていきます。

麻紙より少し大きめに裏打ちするのがいいでしょう。
乾いたら、木製パネルに水張りします。

それで完成です。

ここで注意点は、細川紙はハサミで裁断
されているので、端はくいさきがありません

端も丁寧にくいさきを作る事が必要です。

裏打ちの途中でくいさきとハサミで切った端が
重なる可能性もあるからです。

これでは裏打ちはうまくいきません。
気を付けてくださいね。

裏打ちはいろいろな作品にできます。
上記で紹介したのは、描く前の紙の補強です。

しかし、描いた後に裏打ちをする場合があります。
例えば水墨画などです。

水墨画の裏打ち

私はある絵画教室で子供の水墨画を教えています。
(私の絵画教室は別にあります。)

子供たちは半紙に墨で思いのまま描いています。
その貴重な作品が半紙のペラペラだと
もったいないですよね?

最初はヤマト糊を水で薄めて画用紙に貼って
いましたが、あとからはがれてくるという事態に
なりました。

そこで市販の裏打ち紙というもともと紙に糊が
付いている画材
を購入しました。

この商品はまず水墨画の裏に霧吹きをし、
湿らせてから張り込むといったものでした。

その後、アイロンで熱を加えます。

しかしやはり空気が入ってしまい、
乾くと水墨画がしわになってしまいました。

このように裏打ちはとても難しいのです。
自分でできない人は職人さんに頼むのもいいでしょう。

また雲肌麻紙は裏打ちが必要ですが、
代わりに高知麻紙を使えば、裏打ちの必要性も
ありません

それに、裏打ちした麻紙も売っています
このように、いろいろ工夫が出来ます。

私も最近は裏打ちはしていません。

でも、私は裏打ちが大好きです。
あのコツコツとした作業、出来上がった時の
達成感がとても好きです。

あと、絹本の裏打ちですが絹本は透けているので、
裏打ちの紙の色によって絵の感じが違ってきます。

色選びも慎重にしたいところです。

私は絹本は職人さんに任せています。
F10号で7000円ぐらいです。

こういった職人さん選びは京都で修業されている方が
いいかと思います。京都は本場なのです。

今回は「裏打ち」について紹介しました。
昔はとても面倒臭かったのですね。

今は便利グッズがいっぱい出ていて、
かなり簡易的になりました。

でも、一度は体験しておくといいかと思います。
何も知らないより、どういう過程で出来上がってくるのか、
わかっておいたほうがなんだか安心します。

皆さんも一度裏打ちを体験してみてはいかがでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。

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