日本画には重要な~写生~

日本画には重要な~写生~

古来より日本画においては、「写生」が重要とされています。
洋画でいう「デッサン」です。

日本画では、「ものをよく見て、構造を把握する」という
意味での写生で、洋画とは少し違う意味かもしれません。

洋画では、モノを把握するということ以外にものを
取り囲む空間を描くという意味もありますが、
日本画ではただ自然物を「写し取る」という行為にとどまります。

そこには「自然崇拝」の精神が宿っており、忠実に無心に
把握することが求められます。

「自然は神の作ったものであり、人はそれに打ち勝つことが出来ない」
という理念に基づいています。

花鳥風月のような自然を大切にする精神に基づいているのです。

写生はいろいろな場所でできます。
屋外でもスケッチが出来ます。

屋内でも様々な静物を写生できるでしょう。
お花を写生する時、屋外だと難しい時はお花屋さんで
花を買ってきて家で描いてもいいでしょう。

写生する時は、例えば花の場合、花の構造
しっかりとらえましょう。

何枚花びらが付いているか?どのように葉っぱが
付いているか?などモチーフの花を凝視しましょう。

そうすると、植物というものは螺旋
えがいていることなどが分かってきます。

それが出来たら、今度は花びらの質感を
追い求めましょう。

薄くて柔らかい質感をしていると思います
(一部の植物を除いて)。

それを表現するには、細かく描写していくのが
手っ取り早いです。

あと花びら一枚一枚の細やかな形を見ていきましょう。

シャクヤクのようにビラビラが多い花は、
ビラビラが多い感じに描きます。

花びらの少し欠けているところとか、
折れているところとかを描くとリアルになります。

日本画は基本的に線描が主になるので、
明暗はあまり気にしなくて大丈夫です。

もし、不安なら水彩で色を付けておけば
いいでしょう。

その時に少し明暗を入れておけば、あとで安心です。

お花など動かないものが描けて来たら、
鳥や動物に挑戦してみましょう。

鳥や動物はいつも動いているので、
描きにくいかもしれません。

でも何度もクロッキーを繰り返していくうちに
その動物の骨格が分かってきます。

また、動き方やしぐさ、その動物らしさを
つかむことが出来ます。

写真で撮ってもいいのですが、
写真だとどうしても平面的になりやすいです。

また、その動物が持つ生命力や呼吸している
という雰囲気も、写真だけだと伝わりにくいです。

余程写真が上手なら話は別ですが。

そこまで写真が上手なら画家にならないで
写真家になったほうがいいでしょう。

最近は写真を撮ってフォトショップで加工する
という技術もありますが、絵に生命感を出すには
それなりのデッサン力が必要です。

初心者はまず、数をこなす、クロッキーを
たくさんするほうが簡単でしょう。

次に動物などがうまく描けたら、
人間に挑戦してみましょう。

人間は凄く難しいです。なぜなら、間違っていると
素人さんでもすぐに形の狂いが分かるからです。

特に顔などは、すぐにわかります。
なので、人体を描く時は人体解剖図などを勉強すると
いいでしょう。

漫画家さんやイラストレーターさんも日々勉強しています。

人物がうまくなるには、クロッキーとデッサン
必要です。

クロッキーなら、近くの街でよく開催しています。
ちなみに私もクロッキー会を主催しています。

特にヌードは人物を勉強するにはとても大切です。
男女問わず、クロッキーをしてみましょう。

クロッキーは長くて20分です。
短い時間内で描くので最初は焦りますが、
意外と20分は長いので落ち着きましょう。

そのうち5分や3分などになると、時間がないので
全体を把握しようという気持ちになります。

それもいい傾向です。大きく見るということは、
全体を見ているということなので、
デッサンの上達につながります。

あと、なぜデッサンが必要なのかというと
時間をかけてじっくり描くということは
とても必要なことなのです。

描写をしっかりできるということは大きな武器
になります。

武蔵野美術大学の通信教育を受けている方が
私の絵画教室にもお越しになっていますが、
大体30時間を1枚のデッサンにかけています。

皆さん、「もううんざり」という顔を
されていますが、初心者こそ、飽きるまで、
紙がボロボロになるまで描き続けることは大切です。

そんなに大きな画面でなくてもいいのです。

私も大学時代は一つの人物デッサンに1~2週間
かけて鉛筆で描いていました。

じっくり腰を据えて描くのはとても大事なのです。

じっくり描く、素早く描く、どちらも心の鍛錬になります。

絵というのは、うまい下手ではなく、いかに魂を込めるか、
いかに冷静に制作と向き合うかによって
絵の質が決まってきます。

また、本画とデッサンでは、デッサンが
低い地位にいるわけでもなく、本画と同様に
作品として輝くのです。

このように、「写生」一つをとってもとても
奥深い事がお分かりかと思います。

特に日本画は「精神」というのをすごく大事にします。
書道でも同じですよね。

日本という国は、「精神」を大切にする国なのです。
この現代に精神論?と思われるかもしれませんが、

この慌ただしい現代だからこそ、瞑想のような時間が
必要ではないかと私は思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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