浮世絵って日本画なの?

浮世絵って日本画なの?

江戸時代の浮世絵は版画作品の為、
現代では版画家グラフィックデザイン
近いと言われています。

しかし、浮世絵は江戸時代に成立した
「日本画」のジャンルの一つです。

浮世絵の「浮世」は「現代的な」
「浮世を離れる」「風俗」という意味があり、

浮世絵で描かれるモチーフは歌舞伎役者であったり、
当時の風景だったりと庶民の為の芸術であり、
江戸時代の風俗画です。

現代でもAKB48の写真などが販売されて
いますよね?

浮世絵は当時の人気歌舞伎役者の絵などを描き、
現代のプロマイドのような役割をしていました。

あくまで庶民の為に描かれた絵であって、
江戸時代の人が陶器を包むのに浮世絵を使い、
それが海外に渡り、

海外で「なんだ?この素晴らしい絵は?」
と感動され、その後海外で賞賛されました。

浮世絵の版画技術はとんでもなく高度で、
海外で賞賛されるに値する技術が円熟して
いたのです。

日本画のジャンルその1 浮世絵は木版画だけではなく、肉筆もあります。

浮世絵と言えば、木版画を思い出すと思います。
しかし、浮世絵には「肉筆浮世絵」
というものがあります。

「肉筆」とは、版画ではなく、紙に直接描かれた
1点ものの作品の事です。

葛飾北斎なども肉筆の作品を数多く残しています。

ただ、なぜわざわざ「肉筆浮世絵」というのかと
いうと、テーマが庶民の為に描かれたものだからです。

庶民のために描かれた風俗や大衆娯楽的な
テーマを描いたのは、肉筆でも版画でも
「浮世絵」と呼びます。

日本画のジャンルその2 錦絵と浮世絵の違いは?

錦絵(にしきえ)とは、
明和2年(1765年)に開発された
「多色刷り版画」の事です。

錦絵は浮世絵に含まれる技法で、色が付いた
版画です。

なぜ区別されているかというと、
浮世絵には昔、墨一色で摺られた
墨摺絵(すみずりえ)という版画や

墨摺絵に紅色を薄く乗せた
「紅刷絵(べにずりえ)」がありました。

それらの浮世絵と区別するために
「錦絵」が現れました。

「錦絵」はいろいろな色を施すことが出来、
色鮮やかな浮世絵版画を作る事が出来ます。

日本画のジャンル3 浮世絵で描かれた名所絵

浮世絵版画にはいろいろな名所が描かれています。

庶民が旅に出れない時は、浮世絵を見て疑似旅行
楽しんだと言われています。

名所絵で有名な絵師は歌川広重・葛飾北斎
などがいます。

どちらもビックネームですよね。

広重の東海道五十三次なども良くお茶漬けの
パックに入っています。

日本画のジャンル4 遊女や歌舞伎役者などを描いた「江戸版プロマイド」

当時栄えていた吉原の遊女を描いた浮世絵
「美人画」があります。

また茶屋の看板娘なども人気が高く、
数多く描かれました。

こうして実在する人物が数多く描かれました。

特に浮世絵の革命児となった春信は茶屋の看板娘で
華奢な少女を得意として多く描き、

その浮世絵を見て、美人に惹かれ、
茶屋に駆け付けて行列を成したほど、
影響力は高かったのです。

当時の浮世絵は広告の意味も成していました。

春信はカリスマ絵師として美人画を描いたので、
春信亡き後も美人画ブームは続きました。

庶民は新たな美人画を描く絵師を求め、

そこに現れたのが鳥居清長(とりいきよなが)
でした。

清長は8頭身の華奢な大人の女性を描き、
人気を博しました。

江戸で働く女性を生き生きと描いた美人画は
多いに受け、清長は一気に美人画絵師の
スターになりました。

江戸中期になると、美人画は最盛期を迎えます。

清長からの流れを受けて、次世代には
鳥文斎栄之(ちょうぶんさいえいし)です。

栄之は、旗本出身の武士でありながら、
絵師に転向し、清長で私淑によって学んだという
一風変わった絵師です。

栄之の描く美人画は、今までの美人画より、
さらに理想的なプロポーションや顔立ちを提示し、
人気を博します。

一躍美人画で有名になりますが、
時とともに美人画から離れていき、
次の世代ではスター絵師、喜多川歌麿
登場します。

今でこそ有名な歌麿ですが、
当時はなかなか日の目を見ない絵師でした。

そんな歌麿に目を付けたのが、
当時の版元でありプロデューサーの
蔦屋重三郎(つたやじゅうさぶろう)でした。

歌麿は蔦屋重三郎の元で「大首絵(おおくびえ)」
をあみだし、一躍注目を集めます。

大首絵とは、これまで女性の全身像を
描いていたのですが、その常識を打ち破り、
上半身のみ描いたものです。

美人顔と髪の流れまで詳細に描いた大首絵は
美人画の代名詞になり、歌麿は有名絵師になります。

しかし10年間トップ絵として君臨するも、
幕府の禁忌に触れた作品を描き、処刑され、
処刑後は第1線から退く形になりました。

日本画のジャンル5 色々な浮世絵を描いた絵師たち

美人画のブームが過ぎ、今度は役者絵です。

当時興行的に不振だった歌舞伎界に蔦屋は
目を付けます。

そこで東洲斎写楽を抜擢して、
役者絵を描かせました。

写楽は実は女性だとかいわれたりした、
謎の絵師でしたが、現在では江戸八丁堀に
住んでいた阿波藩のお抱え能楽師の斎藤十郎兵衛
という説が有力です。

写楽が面白い役者絵を描くというのを蔦屋は聞きつけて、
写楽をスカウトし「謎の新人絵師」として
大々的に売り出しました。

写楽は歌舞伎役者を大きくデフォルし、
江戸庶民に大きな衝撃を与えました。

今まで眉目秀麗だった役者絵に大きな波紋を
投げかけました。

写楽は謎の絵師として活躍しましたが、
わずか10か月の間だけでした。

これは、写楽が副業としての契約だった
所以のようです。

江戸後期になると、江戸浮世絵は技術的にも
芸術的にも円熟を迎えます。

この頃に台頭していたのが「歌川」一派でした。

特に歌川豊国は美人画、役者絵、挿絵なども手掛け、
絶大な人気を誇っていました。

この豊国に教わろうと、たくさんの弟子が
押し寄せました。

そして「歌川」一派は巨大な組織となっていきます。

「歌川」と言えば、「歌川広重」を思い浮かべる人が
多いのではないでしょうか?

広重は武士の家に生まれながらも、絵師を目指し
豊国の弟子になろうとします。

しかし、素人だった広重は入門を断られ、
豊国の兄弟弟子であった豊広に入門します。

当時は美人画や役者絵が幅を利かせていた時代
だったのですが、豊広の画風は物静かなものでした。

その影響を受けた広重は次第に「風景画」
興味を持つようになります。

広重が初めて描いた「東都名所」は、
葛飾北斎の威力の元に陰に隠れてしまいますが、

第二弾の「東海道五十三次」は旅行ブームが
到来していた庶民にとって非常に楽しいもの
であり、旅のバイブルとなり、大ヒットしました。

この大ヒットで「風景画」は浮世絵のジャンルに
しっかりと腰を下ろすことになりました。

あと、忘れてはいけない絵師がいます。

「歌川」派で活躍した歌川国芳です。
国芳は広重と同い年でしたが、
最初から豊国に入門を許された天才肌の絵師です。

その画風は独特で性格は無頼派というべき自由奔放で、
独自の路線を進みました。

魚や動物をユーモラスに描いたり、
グロテスクまでに誇張された表現で人気を博します。

国芳の弟子には河鍋暁斎や、月岡芳年など
明治時代を代表する絵師も誕生しました。

日本画のジャンル5 江戸から明治へ

文明開化が行われた明治時代には
浮世絵は大きく変化します。

歌川広重も二代や三代が活躍します。
二代はとても優秀な絵師だったのですが、
世渡りが下手で浮世絵界から姿を消してしまいます。

その反面、三代は絵はそれほどではなかったのですが、
世渡りがうまく、多くの作品を残しています。

明治時代に入ると、浮世絵に描かれている人々の
服装なども変わってきます。

着物ではなく、ドレスを着ています。
鹿鳴館の様子や遊郭などの遊女もドレス
着ています。

しかし、浮世絵の時代は終焉に向かっていて、
摺の荒さ彫りの鈍さなども目立ってきます。

もう、版元、絵師、彫師、摺師の時代では
なくなってきたのです。

江戸時代の分業が崩れ始め、そこに西洋絵画の
影響が入ってきて、日本の浮世絵は大きく
変化しました。

そこで登場したのが、小林清親井上安治
小倉柳村などです。

小林清親はこれまで真っ暗だった江戸の夜が
ガス灯がともる事によって、

光と影を意識した「光線画(こうせんが)」
作り上げました。

そこには、西洋絵画の立体感なども意識され、
今までとは違った浮世絵を発表しました。

井上安治は清親の弟子なので、
同じような光線画を描きました。

また、新しい東京というシリーズで広重を
彷彿させる風景画を描きました。

しかし、身体が弱かったので流行り病にかかり、
26歳という若さでこの世を旅立ちました。

小倉柳村は、清親の弟子かどうかわかりません。
あまりにも謎の人物なのです。

残された作品も9点のみと言われていて、
生没年も不詳です。

ただ、画面に広がる緊張感がタダものではない
雰囲気を醸し出しています。

このころには、リトグラフなどの技術も
輸入されてきて、そこで登場したのが織田一磨です。

彼は、浮世絵のような分業ではなく、
自分で描き、自分で摺るという自画自摺
制作しました。

これが現代の版画家と同じ制作方法の始まりです。

途中から版画の話になってしまいましたが、
現代では自分で摺る人は版画家と呼ばれています。

しかし、昔の浮世絵は間違いなく日本画なのです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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