油絵のリアリティと日本画のリアリティって違うの?

油絵のリアリティと日本画のリアリティ

「絵をリアルに描きたい」と絵を描き始めた方は
そう思うでしょう。

初心者の「リアル」とは、写真のように
見える絵の事です。

主に、油絵を使った作風です。

職人技のような技術を駆使して写真のような絵
のことを「リアル」と思っています。

実際、写真のような作風の作品は数多く
流通しており、売れやすい作品でもあります。

スーパーリアルともいわれます。

ホキ美術館などでは、そういう作風の作品
ばかり扱っています。

これらはいわゆる「油絵のリアリティ」です。
画材の質からスーパーリアルに描きやすいのです。

日本画の岩絵の具ではなかなか難しいです。

こんな話があります。デッサンの勉強の時に
先生がレモンをモチーフに出しました。

生徒たちは「先生、こんな簡単なモチーフ
ではなく、もっと勉強になるような
難しいモチーフを出して下さい」と言いました。

先生は「レモンは形は簡単かもしれないが、
君たちにはレモンの形だけではなく、

レモンの酸っぱさや香りまでデッサンで
表現してほしい」と言いました。

これがデッサンのリアリティです。

これが、日本画のリアリティにもつながります。
細かく写真のように描けない岩絵の具だからこそ、
そのモチーフの質感や匂いなどを表現します。

油絵では立体感などを重視し、絵の中に
三次元空間を作り上げます。

もしモチーフが女性なら、その肌の柔らかさ
などの質感も表現するでしょう。

しかし、日本画ではあまり三次元空間は重要視
していません。

どちらかというと平面的です。日本美術は立体感
という概念があまりありません。

明治時代ごろに西洋の文化が入ってきて、
立体感という意識が芽生えたのです。
ですので、三次元の世界は歴史が浅いのです。

日本画では、写真のようなリアルよりも
「そのものらしさ」を重要視します。

例えば、トウモロコシを描くとき、
粒を数えませんよね?

何となく、ぎゅっと詰まっているような
「感じ」でいいのです。

トウモロコシの形が狂っていても、
トウモロコシらしさがデフォルメによって

より強調されているなら、形がいびつでも
構いません。

形がいびつでも、トウモロコシの甘さや触感
などが感じられる作品ならそれは成功です。

日本画では、こういった感覚を重視します。
そのものらしさ、デフォルメを行う事によって

より強調される本質などが重視で、
写真のリアルとは違うリアルなのです。

ですので、何も岩絵の具で写真のような
リアルを描かなくても大丈夫なのです。

そもそもそういったリアルに描くには
向いていない画材なのです。


昨今、日本では写真のようなリアルが人気
出ています。

もちろん、女性なら女性の肌の質感や色気
なども含む、達悦した描写力です。

それは日本美術の特性でもあります。
写真のような絵画に個性はあるのでしょうか?

写真のような絵画にも個性があります。同じリンゴを
描いても、作家によって少しずつ違います。

これも個性です。

分かりやすい個性としては、NYのバスキア
キースヘリングなど、自由に表現した作品には
「人間の創造性」を感じます。

それもNY独自の特性でしょうが、私たちに
訴えかけてくるものがあります。

わざと荒々しく描くことによって、
あるいは記号化される事によって私たちの視覚に、
五感に語りかけてきます。

日本は職人文化です。卓越した職人技が
好かれます。

職人は英語ではcraft(クラフト)であり、
アートではないのです。

日本美術はクラフトと近いものがあります。
日本で売れっ子になりたかったら、
職人になればいいのです。

それだけ、日本人や中国人は器用ということ
もあります。

器用なので、職人技もあまり苦ではないのでしょう。

しかし、日本人の世界への意識は低いです。
モチーフを写真のようなリアルに描く事には
長けていても、アートの本質である
「何を言いたいのか?」
という意識は低いでしょう。

アートというのは、見る人に訴えかけなければ
なりません。

見る人の五感を触発し、感動を生み出さなくては
なりません。

もちろん、職人技もそういった感動は与えるでしょう。

日本の職人技も世界で認められてきています。
しかし、日本の美術はかなりマイナーなので、
これからという感じでしょう。

最近では、写真のような作品や手先の器用さを
必要とする切り絵などが注目を集めています。

これからどんどん認められてくるでしょう。

でも、日本画のリアルも認められて欲しいです。
日本画はずいぶん前からNYでも展示されています。

日本画は日本独自の日本美術です。
これも併せて世界で認められたいですね。

このように、日本の中でも油絵のリアル
日本画のリアルと違います。

これも個性ということなのでしょうか?

私の絵画教室の生徒さんの中に「スーパーリアル」
を描きたいという人がいます。

でもスーパーリアルはそんな簡単に描ける
ものではありません。

基礎をしっかり学び、描写力をつけなければ
なりません。

写真のようなリアルは素人にも「うまい」
と感じるので分かりやすいでしょう。

日本画のリアルはわかりにくいです。
「形が狂ってる」とか感じる人もいるでしょう。

なかなか素人にはわかりにくいかもしれません。
でも、私が思うには日本画のリアルは世界に
匹敵すると思っています。

日本画のリアルももちろん基礎力が必要です。
基礎がないとデフォルメも出来ません。

どちらのリアルにしても基礎力は必要なんですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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