最も重要な日本画画材~動物性コラーゲンから出来た膠(にかわ)~

膠って何?

日本画を描く時にとても重要な画材の一つに
「膠(にかわ)」があります。

これは、画面と岩絵の具を接着するの役割
をします。

「膠(にかわ)」とは、主に牛などの皮、骨、腱
などから作られているコラーゲンです。
膠にはいろいろな種類がありますが、どれも水で
湯煎をして溶かします。

膠の種類

膠には「三千本(さんぜんぼん)」「粒膠(つぶにかわ)」
「鹿膠(しかにかわ)」
など種類があります。

「三千本」は棒状の膠でペンチで折って短くして
湯煎にかけます。湯煎にかける前に一晩水でふやかし
ておくと、湯煎で簡単に溶けます。

防腐剤が入っていないので、夏は毎日取り換えない
腐ります

黄色味が強いので、絵の具も何となく黄色味を帯びます。
大学で最初に習ったのが「三千本」です。

「粒膠」は「パール膠」とも言われ「三千本」
より接着力が強いです。

防腐剤も入っているため、腐りません。色は透明に近く、
絵の具への影響も少ないです。

粒状になっているので湯煎にかけても溶けるのは早く
効率はいいのですが、やはり防腐剤が入っているので、
長期の保存にはどうなるか、わかりません。

「鹿膠」は「粒膠」よりさらに接着力が強く
修復作業に使われたりします。

「鹿膠」は水に溶けにくく、必ず一晩水で
ふやかしておかないと、なかなか溶けないです。

しかし、濃いファンがいてなかなかの人気の膠です。

これらの膠の中から自分の感覚に合うものを
選んで、岩絵の具とお皿の上で混ぜ合わせます

一色一色違うお皿に作っていきます。
膠と岩絵の具を混ぜる時は中指を使いましょう。

膠は夏は腐るのだけ注意していれば大丈夫ですが、
冬は絵皿の中で固まってゼリー状になります。

ゼリー状になったら、少しお湯を入れて温めれば
もとに戻ります。

日本画家の中には、冬は膠が固まってしまうので、
お皿を手にもって温めながら描くという人もいます。

お皿が冷えて膠が固まるのですから、
お皿を手で温めながら描くのです。

新しい膠

現在では、ウエマツと絵の具屋三吉が開発した
「アートグルー」が広まっています。

この「アートグルー」は膠のように湿度や乾燥にも
弱いものではなく、耐久性に富んだものです。

私は海外が多いので、様々な気候に合うように
「アートグルー」を使っています。

また「アートグルー」は腐らないので、
長期保存ができます。

「アートグルー」の欠点は「膠抜き」「洗い」
やりづらいということです。

「膠抜き」とは、使って余ってしまった岩絵の具から
膠を抜いて再度使えるようにすることです。

通常の膠なら、使って絵の具が入ったお皿に
お湯を入れて膠分を溶かし、流します。

2回ほどお湯を流して乾燥させると、サラサラの
岩絵の具になります。

そうなるので、再度新しい膠を入れて使うことが出来ます。

日本画の洗い

「洗い」とは、また別のブログで紹介しますが、
一度画面につけた岩絵の具を洗い落す技法です。

水かお湯で画面を洗い流します。それで乾かすと
不思議なマチエールができるのです。

で落とすのと、お湯で落とすのとではまた変わった
風合いになります。

水で落とすとあまり落ちなくて、元の絵に少し風合い
出る感じです。

お湯だとかなり絵の具が落ちるので、元の絵が分からなく
なってしまうぐらいです。

私なんかはシャワーで洗ったりします。結構不思議なマチエール
が出来て面白いです。

まず、アートグルーの「膠抜き」ですが、
お皿の絵の具が乾かないうちに水で2回ほど洗います。

そうすると、アートグルーは抜けて元の岩絵の具
戻ります。しかし、少し絵の具が硬くなっているので、
従来の岩絵の具より、使いづらいかもしれません。

また「洗い」がアートグルーではうまくいきません。
接着力が強力なので簡単に落とせないのです。

そこでこの「洗い」をうまくできるようにする
「AG溶解剤」というものがあります。

アートグルーも水に浸すとある程度膨張するので
「洗い」が全くできないというわけではありません。

しかし、思い通りに落ちない時は、刷毛などで
「AG溶解剤」をつけてみると、ドロッと落ちます。

同様に「膠抜き」もこの「AG溶解剤」を使ってみる
といいかもしれません。

このように、現代では現代の「膠」が開発されています。
とても手作業が多い日本画ですが、現代では便利グッズ
なども開発されています。

昔のように悠久な時間があればいいですが、現代社会は
忙しいのです。便利グッズを使ってもいいかもしれません。

もちろん、作家個人の好みで構わないと思います。また、
日本画材屋の「絵の具屋三吉」では、オンラインショップもあります。

https://www.sankichi.com/

私は今、アートグルーを使っていますが、
膠の時は粒膠を使っていました。溶けるのが
早いからです。

個人的には鹿膠のパッケージが好きです。
紙の袋で「鹿膠」といかめしそうに書いてあって、
いかにも「日本画」という感じがします。

私は、大学に入るまで日本画というものを
知りませんでした。しかし、6年間勉強したら
日本画のとりこになりました。

とても手のかかる画材で、面倒臭いのですが、
岩絵の具の魅力は計り知れないです。

それを引き立てる「膠」はとても重要です。

今は海外に出品することが多いので、アートグルー
にしていますが、電気コンロの上にボールを乗せ、
水を入れて膠鍋に膠を入れてといていって、
膠の匂いが広がるのも大好きです。

日本画画材は時間がかかりますが、それをじっと待つ
という、精神も鍛えられます。

ちょっと瞑想に似ているかもしれません。

https://www.bing.com/videos/search?q=%e8%86%a0&docid=608018415246116892&mid=E7E57C780899513B9FFFE7E57C780899513B9FFF&view=detail&FORM=VIRE

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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