日本画の隠れた技法~隈取(くまどり)~

日本画の隠れた技法~隈取(くまどり)~

隈取(くまどり)と聞くと、歌舞伎の化粧
ことを思い出す方もいるでしょう。

日本画の基礎にも「隈取」があります。
骨描きを終えた後、デッサンのように薄い墨
影を入れていきます。

このことを「隈取」と言います。

隈取をしておくと後で色を塗った時に、
自然と少し暗めの色になります。

すると自然に立体感が出てきます。
また、隈取も墨の濃淡を使ってぼかしを入れておくと、
色を塗った時とてもきれいに仕上がります。

岩絵の具を塗っていくと、
だんだんと隈取が見えなくなってくるかもしれません。

でも、全く隈取をしていないと、
色の段階で色と立体感の両方を考えなくては
いけないので、先に隈取をする事を
お勧めします。

隈取には、隈取専用の筆があります。
隈取筆がありますが、特にこれでなくては
いけないというわけではありません。

削用(さくよう)や則妙(そくみょう)などでも
描けます。

先が効きすぎる筆だと、少しきつくなって
しまうかもしれませんが、
できれば慣れている筆がいいでしょう。

隈取はあまりしつこく描く必要はありません。
あまり描くと水墨画のようになってしまいます。

簡単な影だけで大丈夫です。
色に入った時に、自分が混乱しないようにすれば
いいだけです。

私の教室の生徒さんは、隈取はしませんでした。
骨描きからいきなり胡粉を塗りました。

このように、隈取は省いてしまってもいいです。
あくまで、とっかかりとして使っていただいて
構いません。

隈取をしないと混乱するわけではありません。
人によっては、隈取の黒さが嫌という人もいます。

なので、一度隈取をしてみて、
様子をうかがってみてください。

隈取の仕方は、デッサン(写生)をしたときに、
影を塗った部分です。

あと、花なら茎などが暗いので、などにも
塗っておきます。

そうすると、茎より花が目立つという事になります。

墨の濃さ

墨の濃さは、あまり濃くなく、薄めの墨で大丈夫です。
もし薄すぎたら、二度塗りすればいいので、
濃い墨をべたっと塗るよりはるかにいいです。

臨機応変に考えましょう。

墨は擦ったほうがいいです。
墨汁は膠分が少ないので描画に向きません。

隈取の上から下地の胡粉を塗ると、
滲んでしまったりします。

擦った墨は膠分がしっかり入っているので、
滲んだりしません。

ただ、胡粉を何度も刷毛で塗ると、
擦った墨でも滲んでしまうことがあります。

隈取の後の下地

胡粉の塗り方も注意しましょう。
コツさえ分かれば何てことないです。

胡粉を塗った後に、水干を塗ります。
この時、あまり濃い色の水干を塗ると骨描きも
隈取もすべて消えてしまうので、要注意です。

特に紺色は気をつけましょう。

箔を貼るときは、水干を塗ってから貼ります。
この時、銀箔なら鼠色を塗っておけば、
もし箔が少しはがれてもあまり気になりません。

隈取も綺麗に残るでしょう。
銀箔には鼠色、金箔には黄土色などを
使用してください。

ただ、日本画は骨描き、隈取が消えてしまう
のを覚悟で描いていかなければいけません。

逆に、見えいていると途中段階に見えてしまったり、
荒い仕事をしているように思われてしまいます。

なので、最終的には、骨描きも隈取も消えてしまう
思ってください。

油絵やアクリルでも下書きは消えてしまいますよね?
それと同じ感覚です。

日本画の下描き

骨描きと隈取は下描きと同じです。
ただ、私は慣れているので、麻紙にデッサンして
すぐに水干
を塗ります。

この方法は早くて便利ですが、
鉛筆を9Bぐらいにしておかなければいけないことと、
途中で線が消えてしまったときに、
鉛筆で線を起こすことが出来るデッサン力が必要です。

それに、大きな画面だと形が狂いやすいです。
鉛筆なので、消して描きなおす事は可能ですが、
やはり、デッサン力が必要です。

鉛筆も普通の鉛筆ではなく、芯鉛筆を使っています。

大きい画面になればなるほど、デッサン力、
小下図、大下図
などが重要になってきます。

これは、どの画材でも同じです。
小さい絵ばかり描いていると本当の実力
つきません。

コンクール用などに大きな作品にも
挑戦してみましょう。

大きな作品を描く時にも丁寧に隈取などをすると、
あとでかなり楽です。

大きな作品というのは、S100号以上です。
「そんなの描く場所がない」という声が
聞こえてきそうですが、なければ作ればいいのです。

個展会場でも大きな作品で作家の実力を示し、
小さな作品を販売するといった方法は
かなり効果的です。

アマチュアとプロの差は、大きな作品を描けるか
どうかにも寄ってきます。

小さな作品ばかり描いて、安い値段で売って
「私はプロ」という人も多くいます。

しかし、本当のプロというのは、
ほとんどいませんが絵だけで暮らしている人です。

どこかに雇われている人はプロとは呼べません。
「1枚でも売れたらプロ」というような
簡単な世界ではないのです。

しかも、知り合いではなく、全くの他人
売らなければなりません。

絵だけで勝負するのです。

もちろん、ファンが出来て買ってくれるのは、
大歓迎です。

ただ、「絵はわからないけど、知り合いだから買うわ」
という人を相手にしていても、いつか売れなくなって
しまいます。

話はそれましたが、隈取は小さな作品でも大きな作品でも
結構役に立つ技法なのです。

最初、初心者の時に、隈取の練習をしてみては
いかがでしょうか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 

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