骨描きのやり方~鉄線描(てっせんびょう)~

骨描きのやり方~鉄線描(てっせんびょう)~

さて、ここで「骨描き(こつがき)」の仕方
についてお話します。

骨描きとは、別名「鉄線描(てっせんびょう)」
といい、絵の輪郭を墨で書くことです。

基本から言いますと、日本画はまず写生をして、
それからトレーシングペーパーで写生を
トレースします。

その時は線描で構いません。そのトレーシングペーパー
を水張りした画面に転写します。

チャコペーパーを間に挟んで、転写します。
転写するときは、赤ペンを使うとわかりやすいです。

チャコペーパーは時間が経つと消えてしまうので、
消える前に墨で線をなぞります

これが骨描きです。

骨描きは鉄線描と言われるほど、抑揚のない線
が求められます。

息を止めて線を引いてください。
息を止めると線の抑揚がなくなります。

この抑揚のない線が、日本画の特徴です。
しかし、江戸時代の琳派によって線描を描かない
「没骨法(もっこつほう)」というのが
開発されました。

明治時代には横山大観による「朦朧体(もうろうたい)」
とも呼ばれます。

当時はかなりの悪評で、嫌みでつけられた名前
だったのです。

現代でも「日本画は線描でしょ?」という
意見をいただきます。

そのくらい線描のイメージは強いものなのです。
しかし、現代の日本画家では、線描を描く作家と
全く描かない作家に分けられます。

そのくらい日本画は多様化されているのです。

基本的に骨描きは岩絵の具を乗せていくと
消えてしまいます。

なので、形が消えてしまうという状態に陥ります。
その時はもう一度トレースした
トレーシングペーパーを使ってチャコペーパーで
なぞります。

消えてしまうのに、なぜ骨描きをするのか?
答えは、日本画は「単純化」という思念に
基づいているからなのです。

フレスコ画に似ているのですが、何度も形を
なぞって形を単純化することが
「美」とされてきました。

昔の日本画を見ると、かなり単純化されている
のが分かると思います。

小林古径なども代表的な「単純化」です。
しかし、現代ではかなり自由化されています。

このような考えをもつ日本画家も少なくなって
きました。

骨描きをする日本画家も少なくなってきている
のではないでしょうか?

実際私も、骨描きをするときとしない時があります。
写生やスケッチを見て、直接画面に鉛筆(芯鉛筆9B)
で下書き
しています。

ただ、私は骨描きが好きなので、結構積極的に
行っています。

鉛筆で迷いながら描いた線が、墨ですっと
決まる瞬間が好きです。

ただ、デッサン力がないと輪郭線を描いただけ
になってしまいます。

デッサン力はなかなか身につかないですが、
デッサン力があるのとないのでは、
非常に大きな違いが出てしまいます。

ちょっと描いて知り合いに売る程度の趣味の範囲
でしたら問題ありませんが、作家として活動して
いくのなら、デッサン力は必要でしょう。

私もクロッキーは欠かさないようにしています。

美大芸大を出た人は、予備校時代に物凄い量
のデッサンをします。

毎日1枚ずつ仕上げます。1浪で200枚程度
3浪なら600枚は描いているでしょう。

高校生の時から学んでいる人はそれ以上です。

そのくらいしないとデッサン力はつきません。
しかも、クロッキーなどはしばらく空くと
手が鈍ります。

常時何かしらデッサンをする習慣をつけましょう。
そして、絵画教室なりいい先生にデッサンを
教わりましょう。

デッサン力があるのとないのとでは、
雲泥の差が出てきます。

骨描きのためにも、デッサン力をつけましょう。
また、デッサン力をつけるには目を肥やす
というのも大切です。

知識を増やすためにも日曜日の「日曜美術館」
TVで見るだけでもいいと思います。

話を戻しますが、基本を言えば骨描きの墨は本当は、
墨を硯ですって作るものです。

普通の墨汁では、絵画用には向いていません。
墨のコーナーで説明しましたが、現代では
「骨描き用墨汁」が売っています。

かなり膠分が多いので、少し水で薄めて使います。

骨描きをするときは、面相筆を使います。
筆圧によっても違いますが、面相筆(小)
がいいかと思います。

小だと細い線も描けますし、力を入れれば
太い線も描けます。

逆に(大)だと思いがけず、太い線になって
しまいます。

慣れるまでは、どうしても抑揚のある線
なってしまいますが、慣れてくるとすっとした線
が描けます。

怖がらずに線を引くことが重要です。
そして呼吸を筆の動きに合わせてする事が大事です。

息を止めてもいいですが、息を吐く時にすっと線を
引いてみましょう。
きれいに引けるはずです。

でも実際抑揚のない線が引けなくても、絵の具を
重ねていけば、そんなに問題はありません。

逆に太い鉄線描を描いてしまうと、
あとで消えなくて困ったりします。

その作家の作風によって描いても描かなくても
いいかと思います。

実際、日本画で抽象を描いている方
(私も描きますが)骨描きなど必要ありません。

このように、日本画の伝統を守っている人は
少なくなっています。

ただ、初心者は、基本的な日本画の方法を
一度は習ったほうがいいです。

色を塗ったり、岩絵の具を使うのはとても
楽しいですが、デッサンや骨描きは
あまり楽しくない
と思います。

しかし、作家としてやっていくには、
デッサン力や面倒くさい事もやらなければなりません。

「めんどくさいからデッサンはいいや」
という人はアーティストではありません。

デッサンや骨描きなどを勉強してこそ、
素晴らしい作品が出来る
と思います。

それなので、日本画はとても面倒くさい絵画ですが、
一度挑戦してみてはいかがでしょうか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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