日本画での箔の貼り方
日本画に限らず、箔はとても魅力的です。
プラチナ箔、金箔、銀箔、アルミ箔、洋箔、
色箔など様々な箔があります。
私は主に銀箔を使っています。
銀箔は変色するのが良いところでもあり、
悪いところでもあります。
銀箔が焼けるのが嫌なら、プラチナ箔を使うと
いいでしょう。かなり高価なので、絵の値段も
上げていいと思います。
ただ、結構、銀箔が焼けている絵が好きな人は
多いです。
なので、あまり気にせず、銀箔を使っていいと
思います。
逆にわざと銀箔を焼くこともできます。
この方法は、最後にお話しします。
まず、箔の貼り方をご説明します。
用意するものは、箔とあかし紙です。
必要ならばベビーパウダーと箔はさみ。
あかし紙は昔は油を使って作っていましたが、
油分が箔につくので今は「ロー引きあかし紙」
というものを使います。
油分が箔につくと、あとから箔の上に
ドーサ液を引いても油ではじいて、
絵の具が乗らない場合があります。
ですので、ろうそくの油分を引いてある
「ロー引きあかし紙」を用います。
まず、箔を紙から出します。
そうすると薄い紙が箔の一枚一枚に挟まっている
と思います。
その紙をそっととって、箔を取り出します。
その上に「ロー引きあかし紙」の
つるつるしている面を箔に乗せて、手、
または箔ばさみでこすります。
すると、ロー引きあかし紙に箔が張り付きます。
少しロー引きあかし紙のほうが大きいので、
箔に触らずに持ち上げることが出来ます。
心配な方は、指にベビーパウダーをつけて
持ち上げましょう。
対角線上に持って、弓なりになるように
持ち上げるとよいでしょう。
銀箔を必要な枚数をあかしたら、重ねても
平気なので並べていきます。
そして画面に膠を塗り、銀箔を置いていきます。
この時、画面の端から貼っていくのですが、
まず最初に画面の隅に箔を置きますが、
少し箔がはみ出てもいいように貼ります。
次の箔は前の箔に少し重なるように貼っていきます。
そうしないとぎりぎりに貼ってしまうと乾いた時に
隙間が出来てしまいます。
そうなると修復はできますが、
ちょっと不器用な感じになってしまうので、
気をつけましょう。
これを繰り返して箔を貼っていきます。
動画はありましたので、添付します。
さて、箔の上に絵の具は乗るのでしょうか?
答えは否。そのままだと絵の具は乗りません。
まず、ドーサ液を塗って乾かした後に絵の具を
置くと塗れます。
もし、それが嫌だったら初めから絵のところは
箔を貼らないようにします。
膠を絵以外のところに塗って銀箔を押します。
そうすると、必要な部分だけ銀箔を貼る事が
出来ます。
箔を貼ってしまうと、絵の具を乗せた時どうしても
「ギラギラ」とした感じが出てしまいます。
もし「ギラギラ」感が欲しい場合は、
箔を全面に貼りましょう。嫌なら周りだけに
しましょう。用途によって使い分けてください。
どの箔も貼り方は同じです。ただ箔によって厚さ
というか、貼りにくいものもあります。
銀箔や洋箔は貼りやすいですが、
黒箔や金箔は貼りにくいです。
特に黒箔は銀箔をあらかじめ焼いてあるもの
なので、ボロボロともろく貼りにくいです。
黒い箔を貼りたかったら、普通の銀箔を貼って
硫黄で焼いたほうが簡単です。
箔の焼き方は、二通りあります。黒箔のように
真っ黒にしたければ、銀箔を貼った後に
硫黄の粉を一面に置いて一晩寝かせます。
すると、黒箔のような真っ黒な箔に変わっています。
あと、急激に熱を加えて銀を変色させるやり方
もあります。
銀箔を貼った後、銀箔が挟んであった薄い紙を
2枚用意して、間に硫黄末を入れます。
硫黄末を挟みこむような形になったら、
アイロンを用意して「中」くらいの熱さにします。
そして、硫黄末を挟みこんだ紙を銀箔の上に置いて、
アイロンでジュッと焼きます。
硫黄末は溶けていきますが、
黒箔のような黒ではなく、七色に光る銀箔が
出来上がります。
高温で一瞬で焼くため、化学反応がそのように
するのでしょう。
これはとても人気の高い絵柄になります。
この方法はすぐに硫黄が反応して焼けてしまうので、
七色の状態でドーサを引きます。
そうすると焼けが止まって、七色のままになります。
メタルコートでもいいのですが、メタルコートだと
もう上から絵の具が乗らない状態になってしまいます。
「硫黄末」も「メタルコート」も渋谷の
ウエマツか横浜の絵の具屋三吉にて販売
しています。
昔は「ムトウハップ」という硫黄の液体が
薬局で販売されていましたが、今は販売停止に
なっています。
銀箔に焦点を当てましたが、なぜ銀箔かというと
「銀」は「女性」を示すからです。
私の絵のコンセプトとして「女性の気持ち」と
いうのがあるので、「女性」を象徴する銀箔を
多用しています。
このように、ただ「高い箔を貼ったからいいだろう」
とか考えずに、絵のコンセプトから箔を選ぶというのも
一つの方法です。
特に日本画は画材が特徴的なので、「工芸」
という人もいます。本当に失礼な発言です。
しかも美大を出てる人が言うのだから驚きです。
話はそれますが、日本画は立派な平面芸術です。
日本画のことを何も知らずに画材だけ見て
「日本画は工芸」と決めつけるのは良くないです。
ものを判断する時は、自分も勉強してから判断
しましょう。
さて、箔についてですが、箔を貼るのが
難しすぎるという方には、もうすでに
箔を貼ってある紙が売っています。
そういうのも活用してみるのも一つの手かも
しれませんね。
今回はこれで終わります。
最後までお読みいただき、
ありがとうございました。