日本画の画材~墨・黒い色~

日本画の画材~墨・黒い色~

絵画制作の中で、「黒」を使いこなすのは、
とても難しいです。

水彩画などでは「黒色を使うな」という教えも
あったぐらいです。

日本画には代表的な黒、「墨」があります。

墨には、青墨茶墨があり、青墨は描くと
何となく青っぽい墨で神秘的です。

茶墨は何となくあったかい感じがする黒です。

皆さんのなじみが深いのは「墨汁」ですよね?
小学校の時に書道の時間に使った液状の墨です。

日本画で使うのは、固形状の墨で硯(すずり)
擦ります。

墨汁は膠分がないので、絵画用ではありません。

日本画の「骨描き(こつがき)」をすると、
墨汁では後で染みたり、滲んだり、流れてしまいます。

なので、日本画で使う時は、固形墨を硯で擦って使います。

墨汁には膠が入っておらず、代わりに
ポリビニルアルコールという合成樹脂
使われています。

日本画の場合は、墨で「骨描き」した後、
胡粉で一層塗るのですが、
墨汁で描くとこの時に墨が流れてしまいます。

墨のwikipediaをリンクしておきます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A2%A8

「そんな~めんどくさい!」と思われる方も
いらっしゃると思います。

現代では濃厚な墨が売っています。
「骨描き用墨汁」が販売されています。

これだと膠分も十分なので、絵画用に使えます。
渋谷のウエマツか横浜の絵の具屋三吉
売っています。

絵の具屋三吉はオンライン販売をしていますので、
全国、いや海外からでも購入できます。

その他、日本画では「岩黒」「水干の黒」なども
あります。

黒曜石(こくようせき)を砕いた「岩黒」は、
荒さもそろっており、3番ぐらいはなかなか
神秘的な黒い砂のような絵の具です。

墨は一度描いたら消えませんが、
「岩黒」だと洗えます

また粒子の荒い黒なので、なかなか珍しいと思います。

一度知り合いが絵のバックに岩黒3番ぐらいを
引き詰めて描いていて、すごく印象に残っています。

水干の黒は染料なので、紙にしみこみます。

また別でもページでご説明しますが、
水干は小さな塊になっているので、
つぶさなくてはいけません。

潰して粉状になったものに膠を混ぜます。
水干で有名な京都の彩雲堂のものは、
なかなか複雑で膠に溶けにくい水干もあります。

日本画では、絵の具と膠を混ぜ合わせる時に
右手の中指を使います。

染料の多い水干だと中指が染まってしまうことも
多いです。

また、混ざりにくい水干は一度コンロ
あぶるか自然に乾燥させて、
あとから水で溶くと混ざりやすいです。

日本画ですが、アクリルの黒や水彩の黒、
水彩色鉛筆の黒
なども使えます。

アクリル絵の具は油に近いので、
べたっとした感じになります。

水彩画の黒は透明なので、細かいところを
補正するのに使います。

水彩色鉛筆は色鉛筆のような風合い
なりますので、使い方が難しいです。
まだ私も習得してないです。

他にも黒のインクや不透明水彩の黒、
アキーラの黒
などもあります。

日本画材にこだわらず、現代の絵の具
積極的に使いましょう。

私はアキーラは仕上げに使っています。
絵の横の四辺に水張りテープを張り、
その上からアキーラか、アクリル絵の具を塗っています。

そうすると額が要らないのです。
横から見たら少し色が見えてとてもおしゃれです。
額に入れる時は、箱額にすると横の色も
見えていいかと思います。

墨に話を戻すと、墨は煤や膠、香料などを
練り固めたもの
です。

もともとは書画用に作られました。

墨には「朱墨」というものもあり、昔、
子供の頃、書道教室で先生が直してくれた
赤い墨です。

まるとか、ハネルとか書かれましたよね?
あれが朱墨です。

日本画では朱墨は使いません
(まあ使ってもいいのですが)。

基本的に墨を使います。

私の友達で、「墨を擦る」というパフォーマンスを
重要視して「禅の心」を表現した画家がいます。

ひたすら墨を擦り続け、9mにも及ぶ真っ黒な
作品を作り上げました。

このように、「墨を擦る」という行為は、
精神性を大切にする日本画ではとても大切なこと
なのです。でも私も濃厚な墨汁を使っていますが(^^:)。

墨は香りも素晴らしいです。墨を擦っていくと
とてもいい香りがします。

心が安定します。

なので、私は時間があるなら墨を擦りたいです。
特に初心者はこの体験をしたほうがいいかもしれません。

日本画で墨は骨描きに使われますが、
ほかにも使われることがあります。

例えば抽象画を描くとき、自由に墨を垂らしても
いい
のです。

また水墨画を描くときは絵の具のように
使っていきます。水墨画も日本画に入るのです。

水墨画を描くときは、墨の濃度を3段階に分けます。
薄い・中くらい・濃いという感じです。

それらを使って描いていきます。

「墨の中に7色の色彩を感じる」と言われるぐらい、
墨は表現豊かです。

私も中学生に水墨画を教えていますが、
最初の3段階を間違えると全然描けません。

水墨画については、また次回にしたいと思います。

ぜひ、墨の美しさを堪能していただきたいと思います。

最後までお読みいただいて、ありがとうございます。

 

 

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