暖かい風合いの基底材~麻紙~
日本画の基底材といえば、「和紙」を
思い浮かべるのではないでしょうか?
「和紙」に他にも「絹」や「板」などもありますが、
今回は「和紙」に注目してみましょう。
「和紙」という名称は明治時代に輸入されてきた紙を
「洋紙」と呼んだことに対して、従来の日本製の紙を
「和紙」と呼んだことに由来します。
日本画をやり始めたころは一般的に和紙の中の
麻紙(まし)を使います。
そして、一番ポピュラーなのが、
「雲肌麻紙(くもはだまし)」です。
麻(あさ)と楮(こうぞ)を混ぜて作られた丈夫な
麻紙で、大作にも適しています。
表面が雲のようにムラになっているところから、
「雲肌麻紙」と名称が付いたようです。
その他に高知麻紙、白麻紙などもありますが、
私は最近は「高知麻紙」を使っています。
「高知麻紙」は「雲肌麻紙」よりさらに強靭です。
雲肌麻紙はF50号を超えると裏打ちをしないと
後で紙が割けたりするのですが、
高知和紙は裏打ちの必要性もありません。
S100号でも、S150号でも裏打ちなしで
使用できます。価格も雲肌麻紙より安価です。
高知麻紙のHPを張り付けておきます。
ご興味ございましたら、ぜひご覧ください。
http://osaki-kouchimasi.com/concept.html
和紙にはこのほかに、裏打ち用の細川紙、
模写用の薄美濃紙(うすみのし)、
練習用の画仙紙(がせんし)などいろいろな紙が
あります。
裏打ちのページでお話しますが、細川紙は
A3ぐらいに切って、くいさきを作り、
一枚一枚雲肌麻紙の裏に張り付けていきます。
糊はふ糊を使います。
「薄美濃紙」は薄いので裏打ちにも使えますが、
模写の上げ下ろしの技法の時にも使えます。
また、和紙での裏箔の時にも使え、
多用できる和紙です。
あと、「鳥の子紙(とりのこし)」は雁皮を
主原料に作られたものであり、この可愛い名前は
鶉(うずら)の卵の色に近いからということで
付けられました。
「楮紙(こうぞし)」は楮や梶の木を原料とする
強靭な和紙で、比較的安価です。
「三マタ紙(みつまたし)」はジンチョウゲ科
落葉低木の木で、枝が三つに分かれているので
ミツマタと呼ばれます。
国内ではお札などにも含まれています。
色々ありますが、用途や描きやすさを考慮して
使いこなしてください。
初心者は「雲肌麻紙」がいいかと思います。
さて、和紙には「生(なま)」と「ドーサ引き」
があります。
「生」はにじみ止めのドーサを引いていない和紙で、
絵の具を乗せるとにじみます。
通常「生」は使わず、「生」の場合は自分で
ドーサを引きます。
ドーサは膠にミョウバンを入れて作りますが、
すでにミョウバンが入った膠がドーサ液として
市販でも売っています。
自分でドーサを引く場合は、雨の日は避けます。
和紙が生乾きになり、うまくにじみ止めが
出来ないからです。
またドーサをお湯で作って引くと蒸発が早く、
綺麗ににじみ止めができます。
にじみ止めをしないで、そのにじみを利用して
制作している作家さんもいます。
なので、基本的にはドーサを引きますが、
それに捕らわれることはありません。
ただ、ドーサはいろいろな場面で制作を
助けてくれますので、常時持っていたほうが
いいでしょう。
また、麻紙は木製パネルに水張りをします。
大きいサイズでも水張りをします。
これは、水張りのページでお話します。
外国に作品を出品することが多い私の感想ですが、
外国では紙(paper)は保存に弱いというイメージが
付いています。
紙に描いているというだけで、購入するのを
ためらう外国人も多数います。
うまく英語で翻訳してこの紙は強いという
真実を知ってほしいです。
紙に話を戻します。近年国産の和紙の原料が
国内で取れにくくなっていますので、
輸入されているとのことです。
地域が違うと、原料の質も違ってきます。
タイからの輸入の原料は脂が多く、
手間がかかるとのことです。
また中国からの輸入品も脂が多いので作業が
大変とのことです。現在は韓国と国産に頼る
ところが大きいです。
どんどん生産が少なくなる背景には
「紙職人」の後継者が少なくなっていることが
挙げられます。
こういった伝統職人は「和紙」に限らず、
同じ問題を抱えています。
なんとしてでも、和紙の生産を続けてほしいものです。
こんな貴重な和紙がなくなってしまったら、
日本画家はどうしていいかわかりませんね。
なくならないようになんとか職人さんに
頑張ってもらいたいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。