鮮やかな色彩の日本画画材~水干~

鮮やかな色彩の日本画材~水干~

水干とは、白色顔料や胡粉に染料を着色したものや
天然の黄土系を原料に作られたものがあります。

水干は主に、岩絵の具の下地に使われます。
最初の骨描きが終わった後、下地に胡粉を塗り、
その上に水干を塗ります。

水干(すいひ)は何色もあります。
絵の具屋さんによって取り扱いしている水干が
違います。

以前、ブログに書いた京都の「彩雲堂」では、
300色近く水干を取り扱っています。

淡いパステルトーンや発色の良い赤など、
様々な水干を置いています。

私は色見本として、全色揃えています。

「彩雲堂(さいうんどう)」では、
絵の具の名前はなく、番号が付いています。

そこで絵の具を買うとき、
決して「空の色の絵の具ください」などという
注文はしないでください。

空は、朝焼けもあるし、夕焼けもあります。
夏の空もあれば、冬の空もあります。

一概に「空の色」と言っても、絵の具屋さんは
困ってしまいます。

「水色」とか「青色」という風に具体的に注文
しましょう。

鮮やかな色彩の顔彩

水干は岩絵の具のように上品な色ではありませんが、
色は鮮やかです。

水干だけで絵を描く人もいます。
比較的安価で使いやすいからでしょう。

世界堂や普通の画材店には、水干の代わりに
「顔彩」を置いています。

「顔彩」とは、粉状の水干に膠を入れて、
型に固めたものです。

私も「顔彩」は色鮮やかなので、よく使います。

岩絵の具は明暗が暗いものは荒いので、
影の部分などには使いづらいのです。

今は合成絵の具が出ていて、細かい暗い絵の具も
ありますが、気分的にあまり私は合成絵の具は
使いたくないのです。

私は「顔彩」の68色を持っていて、
仕上げの細かいところに使っています。

色も鮮やかでとてもきれいです。
粒子が同じなので、混ぜることもできます。

水彩絵の具の要領で使えるので大変便利です。
日本画の絵の具は多岐にわかっているので、
どれを使うかは作家本人の決断でいいと思います。

鮮やかな色彩の岩絵の具・水干など

古来の日本画は平山郁夫画伯をはじめ、
高価な絵の具を使っていました。

金箔とか群青とかです。
売れっ子はお金があるので高い絵の具が買えるし、
またそれを見て高額な値段で日本画は取引されていました。

その結果、「日本画は高い」という
イメージが付きました。

ほかの画材を使っている作家からは「芸術」ではなく
「工芸」と言われるようになりました。

この「工芸」のイメージを壊さなくてはいけません。
そうしないと、日本画は衰退してしまうのです。

なぜかというと、私は絵画教室で生徒さんに
日本画を教えていますが、

「日本画を習いたいけど、高価で、、、」

という声が多いのです。確かに画材は多く必要であり、
麻紙だけでもかなり高いです。

しかし、岩絵の具や水干など他の国では
見られないような独特の画材は非常に魅力的です。

中国にもありますが、日本画は独自の発展を
遂げています。

実際私も日本画科に入るまでは、
日本画がこんな問題を抱えているとは知りませんでした。

ただ「いいな~」ぐらいです。
だから、昨今では金箔や群青を使わなくても
十分表現できる学生が増えました。

なので、水干や顔彩も日本画の画材として多用してもいい
と思います。

もともと、水干は下地用、顔彩はスケッチ用なのです。

話はそれましたが、水干はとても使いやすい絵の具です。
特に「銀解末(ぎんかいまつ)」は色も
不思議で塗りやすいです。

日本画は岩絵の具を使うので、絵を横に寝かさないと
描けません。

しかし、「銀解末」や水干だと立てたまま描くことが出来ます。

水干の使い方ですが、パラパラとした荒い塊なので、
すり鉢でするか、コピー紙を半分に折り、
その間に水干を入れ、折り畳み、筆でゴロゴロとすりつぶします。

細かくなったら、紙からお皿に移し、膠を入れて、指で溶きます。
まだ粒子が荒いものが残っているので、
できるだけ指ですりつぶします。

でも、綺麗に溶けなくても、問題ないです。
普通に使っていると、荒い解けなかった絵の具は
お皿の下に沈殿してしまいますので、
作画に問題はありません。

もし、画面に荒い粒が乗ってしまっても、
乾いた後、爪でこすると落ちます。

もし、白地が見えてしまったら、
細い筆で修復すれば大丈夫です。

また、この荒い粒が気になる人は、
チューブの水干も売っているので、
使ってみるのもいいでしょう。

このように、水干は多種多様に使われています。
術」に決まりはないので、自分の使いたい
ように使えばいいのです。

銀座で個展をしたとき、「顔彩だけで描いている
のですか?岩絵の具は?」という、馬鹿げた質問を
した人がいました。

そんな偏見に惑わされることなく、
岩絵の具を使いたければ使えばいいし、
使いたくなければ使わなくてもいいのです。

ただ、水干にも岩絵の具にもいいところがあります。
ここは岩絵の具ではなくてはいけないというところも
あるでしょう。

そういう風に使い分けるためには、
やはり基礎をしっかり身に着ける必要があります。

焦っていては、いい芸術はできません。
ちょっとの知識なので、じっくり日本画に
取り組んでみてはいかがでしょうか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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